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#文披31 day11 直線 『北の大地の道の上』
今年も訪れた北の大地は、変わらず雄大だ。 街で、猛暑に揉まれた身体と心がクールダウンさせる。とはいえヘルメットで顔周りが暑いことには目をつぶりつつ、エンジンをかける。 「待ってろ〜」 星になった友の眠る場所へ、進む道はどこまでも続くようだった。
『友人の虚像』 #文披31 day9「見逃し」
視線の先に、模範的人物と評される友人がいる。 大勢に囲まれている友人は、不意に疲れた様子で視点を下に落とした。 おや?と見ると、無言で私を刺すように見て、また普段の友人に戻った。模範的人物の姿は友人が生活のため身にまとう武器だとしたら、武器はそのまま見逃してやるか。
『幼き日から今へ』 #文披31 day8「アミュレット」
「あれはどうしたの?」 問われて見上げると、あったはずの場所にそれが無い。 慌てて探すと、擦り切れた布と紙が床に散っている。 病弱だった幼き頃、今は遠くにいる憧れの女(ひと)から健康の為、と貰って、今はなんとか人並みの体力になった。役割を終えたお守りに、心の中で頭を下げた。 #140字小説
#みんなで140字小説 「日本刀」
若侍が尋ねる。「師を斬ったのは貴殿か。真なら…」言い切る前に、「いかにも」と返される。 「あの日から、お主の師が狂うばかりの顔で斬りに来るのだ、夢のなかで。」 そう答えると、老人は腰のものを土へ刺し、もう侍は止めると残して去った。刺した場所は斬った男の最期の地。
#みんなで140字小説 「見栄張り」
隣の後輩が突っ伏している。なぜ後回しにした…と自らに呪詛を吐きながら。資料作成をして、どうも電池切れのようだ。 自分も少し期日の近い書類があったが、つい言ってしまった。「手伝おうか」 分かりやすく顔が輝き、「ありがとうございます…」と返される。 さて、書類はいつ完成させようか。
靴紐を結ぼうと屈むと、ホームにハンカチが落ちた。 薄ピンクのそれが目の前を通る。見上げると白い服の女性がいた。渡そうと、慌てて声をかける。彼女は言った。「これも縁です。受け取って。あなたが迷い答えの出ない時、ヒントが包まれて出てくる。」?を消す為聞こうとすると、彼女は消えていた。
#みんなで140字小説 「お前あの祠壊したんか」
「お若いの、今なんと」寒村の外れにあった崩れかけの祠を、旅の途中よろけた時に崩した。庄屋へ詫びを入れるとそう返されて、さらに涙を流した。慌てて頭を下げると、止められる。「あれはいつだか突然立った。それからここは何も穫れなくなったんだが…今朝麦の芽が生えた。お若いの、ありがとう。」
#みんなで140字小説 お題「茶柱」
茶農家の実家で育った。自分とお茶が近すぎたので、茶柱などただの現象と考えている。わずかな休憩時間に弁当をお茶と共にかき込んでいると、ふとバイブ通知。スマホでメールを見たら、ずっと落選続きだった推しのコンサートチケットが当たっていた。一気に心躍る片隅で、コップに茶柱が浮いている。
#みんなで140字小説 お題:責任
平行線のまま終わったリモート会議。その夜ふと目を覚ますと、紙が1枚床に落ちていた。 薄くかすれた文字が見えて目を凝らすと、それは卒業の時恩師がくれたプリントだった。「社会では口に出すことが他人を動かすことを、心に留めて。」 恩師に目の前で諭されたような気がして、思わず頭を下げた。
#140字小説 主題:自動販売機
風荒ぶ2月の夜、男は仕事帰りに商店の自動販売機の前で足をとめた。 職場ではあまり話さない同僚が、疲れた様子で買おうか買うまいか迷っている。 自分の疲労を言い訳に、「缶コーヒーでも一緒に買って話を聞こう」と進むと同僚は商店へ入っていき、空虚が残った。 空虚を埋めに店に入るか、男は迷う。